墨田区議会自由民主党・無所属の小林しょうです。私からは、先に通告した大要二点について質問いたします。どちらとも、区民の方の声を受けた質問です。山本区長には、前向きなご答弁をお願い申し上げます。
まずは「本区の保育行政」について伺います。
先日、区内のある私立保育園の運動会に参加いたしました。コロナ禍で溜まっていた鬱憤を晴らすかのように、子どもたちのいきいきとした声が校庭に響き、お子さんやお孫さんの勇姿を記憶にしっかりとどめようとするご家族の姿がとても印象的でした。その光景とは対照的に、園長先生からは今後の保育行政に対する危機感を伺いました。それは、「保育士の配置基準」という問題です。
前提として、保育士の配置基準は厚生労働省の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第33条第2項に定められています。つまり、国によって定められている基準です。現在、保育士一人が見る園児数は「ゼロ歳児が3人、1・2歳児が6人、3歳児が20人、4・5歳児が30人」と定められています。本区では、公立保育園については、例えば1歳児の園児5人に対して職員数1人、つまり5:1(5対1)といったように区独自の上乗せ基準を設けていますが、私立保育園については国の基準にならっています。
本区議会においては本年3月22日、議員提出議案第15号「保育環境の充実に関する意見書」が内閣総理大臣や衆議院議長ら国に対して提出され、保育士の処遇改善等、保育環境の充実を進めるよう強く要望がなされました。そのほか、全国各地においてさまざまな要望が行われていることは承知しておりますが、今回はその中でも、私立保育園・公立保育園に共通する課題である「ゼロ歳児保育における配置基準」に焦点を絞り、本区の方向性、山本区長のお考えを伺います。
ゼロ歳児における配置基準の見直しを強く求める背景に、このような具体例を聞きました。日頃の防災意識、特に子どもの命を預かる保育分野における防災意識は、常に最悪のケースを想定して行う防災訓練等で養われるものです。たとえば、国の基準に沿い、保育士一人でゼロ歳児3人を見ている保育園で火災があったと仮定します。偶然にも女性保育士だけが園にいたとして、避難する際、両腕に一人ずつ園児を抱き、さらには抱っこ紐で一人を背負うとします。ある園では、幸いにも訓練という場でしたが、とても立ち上がれないという保育士が続出したそうです。個人差はありますが、ゼロ歳児といっても生後10か月頃には10キロ近くに達する子もいます。仮にゼロ歳児に対して2人の配置基準であれば、逃げ遅れるといったケースは減り、救われる命が増えることでしょう。また、離乳食を食べるタイミングも三者三様で、とても目が届かないという現場の悲痛な声も聞かれます。
ここでお尋ねいたします。3月に本区議会から国へ意見書が提出されたことを踏まえ、本区の保育行政に対する山本区長の現状認識と課題について、ご所見をお伺いします。また、いま申し上げた災害時避難の困難さといった具体例も踏まえ、ゼロ歳児保育における職員の配置基準について、区長の受け止めも合わせて答弁願います。
ゼロ歳児の保育士配置基準を独自に条例で定め、保育士の負担を軽減しているのが神奈川県横須賀市です。ゼロ歳児の保育士配置基準は私立保育園・公立保育園ともに「2.57」と、3を切っています。これは平成25年4月1日に「児童福祉施設の設備等に関する基準を定める条例」を制定・施行し、その後5回の改正を行う等、保育士の配置基準を時代に合わせ、その都度改善することで実現した基準です。また、質の高い保育を担保するため、条例施行以前から国の配置基準を上回り、園児の年齢に応じた保育士を配置している各保育施設に、必要な雇用経費を「保育所機能強化費」として補助金を交付しています。当該補助金の要件としていた保育士の配置基準を、平成25年に前述の条例に規定しました。
横須賀市の、ある私立保育園は、インターネット上に公開されている保育士求人サイトに「国が定めるよりも高い、独自の配置基準で余裕のある働き方を!」という謳い文句で保育士を募っているほどです。
政府においても新たな動きがありました。本年6月13日に「こども未来戦略方針」を閣議決定しており、このなかで「平成24年「社会保障と税の一体改革」以降積み残された1歳児及び4・5歳児の職員配置基準について1歳児は6対1から5対1へ、4・5歳児は30対1から25対1へと改善するとともに、民間給与動向等を踏まえた保育士等の更なる処遇改善を検討する」と明記されました。これを受けて岸田首相は「これからは量の拡大から質の向上へと政策の重点を移し、75年ぶりに保育士の配置基準を改善し、保育士さん1人が見る1歳児を6人から5人にするほか、保育士の処遇改善に取り組んでまいります」と、1歳児基準についてですが、配置基準の改善へ意気込みを見せています。
しかしながら、各保育施設の経営状況や職員採用等の状況にはバラつきがあります。全国的な保育士不足が叫ばれるなか、一律に職員の増員を課すような議論は慎重に行われるべきですが、大前提として第一に守られるべきは園児や職員の安全であり、命です。
本区における私立保育園への支援策は『墨田区私立保育所扶助要綱』に定められています。とりわけ、今回の質問で問題提起をしているゼロ歳児においては、扶助要綱内の「零歳児保育特別対策事業」において、園内に十分な広さを確保するといった一定の条件を満たした場合に、職員の雇用経費等を対象にする扶助費を支給しており、その区の姿勢は評価されるべきです。
コロナ禍において、本区は山本区長の強力なリーダーシップのもと「墨田区モデル」という体制を構築し、そのコロナ対策は羨望の眼差しとともに全国の注目を集めました。
そこでお尋ねいたします。ゼロ歳児の保育士配置基準の見直しを含めた墨田区独自の上乗せ基準を新設する等、保育の質の向上を今後どのように進めていくのか、山本区長のご所見、課題解決に向けた意気込みをぜひお聞かせください。
次に、「アライグマ、ハクビシン等の野生動物への対策」について質問いたします。
近頃、千葉県においてシカの仲間である「キョン」という野生動物が大量発生しており非常事態となっています。20年以上前に千葉県勝浦市のレジャー施設から脱走し、野生化すると爆発的に増加。現在では、生態系や農業等へ被害を及ぼす“特定外来生物”に指定されています。
本区をはじめとする都内では、アライグマやハクビシンといった野生生物が頻繁に目撃され、実際に、ご自宅の庭で育てていた家庭菜園を荒らされたり、自宅の天井裏に入り込んでしまったという被害の相談を頂戴することがあります。
アライグマやハクビシンは、狂犬病やE型肝炎等、複数の人獣共通感染症を媒介する可能性があり、 加えて両種からはペットに重篤な感染症を引き起こす病原体も検出されており、ペットが直接または間接的に接触するリスクが高い市街地ではこのような感染症への警戒が必要です。ドッグランの仮設置を予定している本区にとって、その対策は喫緊の課題ともいえます。
東京都では、平成25年に「東京都アライグマ・ハクビシン防除実施計画」を策定し、都内の自治体は計画をもとに対策を実施しています。本計画では「都や自治体は、捕獲従事者や捕獲に協力する都民等だけでなく、広く都民一般にもこうした事実を的確に周知していく必要がある」との記載もあります。
ここで区長にお尋ねいたします。本区では、アライグマやハクビシンといった野生生物への対策や危険性を、どのように区民に周知しているのでしょうか。現状をお伺いいたします。
本計画が策定された平成25年における都内の防除対策実施自治体は「あきる野市」だけでしたが、区部における目撃情報・被害件数の増加を受け、現在では都内全54区市町のうち45の自治体が防除対策に取り組んでいます。都内23区に限ると21区が実施しておりますが、残念ながら本区は実施していない残り2つの区に含まれています。
計画が策定される前の平成18年から平成20年の調査では、アライグマやハクビシンは近隣区と比べて本区にはほとんど生息していなかったというデータから、当時、本区での対策は急を要する状況ではなく、それゆえに防除対策を実施してこなかったと拝察します。
しかしながら、現在、本区における被害相談件数・目撃情報は、今年度でアライグマが10件、ハクビシンが21件となっており、特にアライグマに関しては直近の5年間で最多件数となっています。被害に遭った方は、罠を仕掛けたり、駆除をしたいと思うわけですが、たとえアライグマやハクビシンを発見しても外来生物法や鳥獣保護管理法により、許可なく捕獲することはできません。
そこで区民が頼るのが行政です。防除対策を実施している都内45の自治体の多くは、住人や管理者の許可を得た上で民家や建造物に「箱わな」と呼ばれる捕獲道具を設置する等、東京都の事業補助を受け、区市町が主体となった捕獲・駆除対策を行っています。その多くが、相談者はエサ代にかかる実費のみを負担し、罠の設置費用等は自治体が負担しています。
一方、本区では、区のホームページに「捕獲の許可を得ている専門業者にご相談をお願いします」や「複数の業者に見積もりを依頼するなどして、条件・費用等をご確認の上、ご依頼をお願いします。なお、捕獲等の費用は個人のご負担となります。捕獲等に関する補助金・助成金はありません」といったように不親切な印象を覚える案内と、専門業者の団体である「公益社団法人東京都ペストコントロール協会」のホームページに誘導するリンクが記載されているのみです。
野生生物の目撃情報、被害は本区でも増えております。ここで区長にお尋ねいたします。住民の方が頭を悩ませる野生生物の被害、いわゆる獣害においては駆除業者の紹介にとどまるのではなく、近隣区と同様に罠の設置等、行政として有効な対策を講じるべきと考えますが、区長のご所見をお伺いします。
以上で、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
区の答弁書